2017年10月7日

君の答えを探して

上野遥生誕祭の翌日、5時30分北九州空港発の飛行機に乗って直接会社に行く予定が、隣のホテルで目を覚ますと時計は5時3分を指していた。
その後はどんな動きをしたのか自分でもよく覚えていないが、着替え、髪型をどうにかし、荷物をまとめ、部屋を出てエレベーターを降り、チェックアウトし、ホテルから空港への700mを桐生祥秀のようにスプリントし、航空券を発券し、手荷物検査を潜り抜けると、時刻は5時13分だった。
ただでさえ寝不足の身体に火事場の馬鹿力を強要したため、その後丸二日間にわたって全身が鉛のように重かったが、ともかく私は遅刻をしなかった。
そんな経験を直前にしていたため、会社から定時ダッシュして原宿駅に18時53分に着き、初めて行くホールまで地図を見ながら走って当日券を買い、19時の開演までに着席するというのは、別段非現実的な計画ではないのではないかと思い始めたのが、10月5日の18時前、偉い人が揃って会議中の隙にさっさと帰ろうと支度をしていたときのことである。

そんなわけで、「君の答えを探して」を見てきた。
各SNSでの反応を見る限り、みんな概ね満足しているようだし、いいところは私でなくても色んな人が言っているだろうから、私はあえて少し不満を漏らしたい。

そもそもこれは、「栄光のラビリンス」というHKTのゲームの投票企画で出演メンバーを決めた舞台である。
つまり、客はHKTを見に来る人が99.9%だ。
「コントユニット」という芸人なのか役者なのかよくわからない肩書きの、「大人のカフェ」なる共演者のお三方にも、もちろんファンはいるだろう。
だが、今回の舞台は売り方からして、HKTを全く知らない人が紛れ込む余地はほとんどないようになっている。
であれば、その舞台の内容は「HKTの文脈」から完全に切り離した、メンバー個人の資質を追求するものであってほしいのだ。

「…逆じゃないの?」と普通の人はお思いだろう。うん、俺もそう思うよ。
ただ。ただですよ。
それだったら別にゲームで投票なんて回りくどいことしなくたって、運営が主催してやればいいじゃないのと思うのである。
「HKTらしいHKT」はいつでも見られるんだから、より「外仕事」に近い環境を提供できる立場にあるアイアさんには、もっとメンバーの本質を大胆に掘り下げる企画を立ててもらいたいのだ。

具体的に何が不満だったのかというと、まず稽古時間の少なさ。
コンサートの前日に初めて通すとか、レッスン場が使えずに映像だけ見て公演の振りを入れるとか、48のいつものやつである。
コント劇だろうが劇は劇ではないのか。劇で一番大切なのは稽古ではないのか。
案の定というか、指原莉乃座長公演でみっちり稽古を積んだ経験のある秋𠮷優花と他のメンバーとでは、声の出し方一つ取ってもまるで違う。
せっかく。せっかくの舞台なのに。稽古不足の状態で舞台に上がらなければいけない無念さよ。
私は見ている間、「もったいない」という感情が常に脳裏に付き纏っていた。

そして、言わばそういう「本気を出していない」舞台の割に、5,800円という強気の価格設定。
それを物販にメンバーを出したりサインボールを投げさせたりお見送り会をやらせたりすることでペイしようとする、結局「HKTブランド」に頼ろうとする姿勢。
気に食わない。プロである共演者の方々にも失礼だし、メンバーの能力を信じ切っていないとも取れるやり方だし、何より「それでもオタクは集まるだろう」という客に対する安易な見通し。
いらんいらん!そんなアイドルみたいなサービスはいらん!俺はHKTメンバーの「舞台」が見たいだけなの!

まあ、私もホイホイ見に行った上にそれなりには楽しんだのだから、本来こんな文句は言うべきではないし、実際別にそこまで怒っているわけでもないのだが。
でも、心にうっすらと差した影を無視して上っ面だけの褒め言葉を並べ立てるのは、何か違うと私は思うのだ。
だから、今後への期待を込めて、あえて言わせてもらった。

別にサインボールが欲しくて行ったわけでもないので、足元に転がってきた下野さんのボールは隣の人にあげてしまった。
私は普段、誰のボールだろうとありがたく頂いて帰るタイプの人間である。
それがどうしても今回だけは、素直に受け取る気になれなかった。
その気持ちが、やっぱり全てを物語っているんじゃないかと思うのだ。
次こそは、心の底から楽しませてくれるイベントを期待している。